夫が昼食を摂ろうと、駅前のうどん屋に入りました。
うどん屋は特別なうどん屋ではなく、庶民的なお店です。
1杯300円のうどんを食べ終え、ごちそうさまと言って
小銭を差し出した夫に、店主が真剣な面持ちで言いました。
「あんたは立派な人だね」。
うどんを食べ終え金を払っているオレの何が立派なのか?
訳が分からず首をひねる夫に店主が説明します。
「勘定を両手で差し出した人はオレがこの商売をはじめてから
あんたで二人目だよ」。店主は感激に声を震わせます。
あ、そうですかそれはどうも、と、どういうリアクションを
していいのかわからず、おろおろする夫。
「勘定を払うときさぁ、投げてよこすお客さんもいるっていうのに
本当にあんたは立派だよ、近いうちに必ずいいことあるよ」。
まいどあり、の声を背中で聞き店を後にする夫。
両手でお金を支払うのは、アジアでは6番目ぐらいに腰の低い夫としては
当然の行動です。いつもやっている動きを特別意識したことはありません。
けれどそんなことでも、誉められるのは嬉しい。
満腹なところに誉められて上機嫌の夫がふと、あることに気がつきつぶやきました。
「これで、うどんが旨かったらなぁ」。
まずかったんかい。